永田龍生さんと吉村柚香さん(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 バイオマテリアル研究室)が、2024年12月14日~15日に横浜国立大学で開催された日本機械学会第35回バイオフロンティア講演会において、若手優秀講演賞を受賞しました。
軟骨再生において、基質となるコラーゲンの産生量を増加させることは極めて重要であり、力学的刺激が着目されています。しかし、有効な刺激は条件比較による探索が必要であり、状態に応じて最適化できないことが課題となっています。そこで本研究では、コラーゲン産生に関わるCol2a1遺伝子の発現量・位置をライブイメージング可能な遺伝子を作製し、Col2a1の発現動態に応じてリアルタイムに外的刺激を最適化可能なシステムを開発しました。本手法によりCol2a1発現量の増加を可能とする最適刺激の確立に成功し、本研究成果と発表内容に対して高い評価をいただきました。
「軟骨基質の効率的産生に向けた可変力学刺激制御システムの確立」
永田 龍生(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 2年次生)
小林 永(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 2年次生)
森田 有亮(生命医科学部 医工学科 教授)
山本 浩司(生命医科学部 医工学科 教授)
疾患や外傷による生体組織の大規模損傷に対して、細胞とスキャホールドを用いた組織再生法の開発が進められています。PLLAスキャホールドは生体適合性に優れているものの、細胞接着性が乏しいため、早期の組織再生に至らないことが課題です。本研究では、PLLAにゼラチンマイクロ粒子を混合することによって、表面性状と細胞接着タンパク導入の制御を可能としました。本手法によってPLLAスキャホールドへの細胞接着および細胞増殖の大幅な改善を認め、本研究成果と発表内容に対して高い評価をいただきました。
「ゼラチンマイクロ粒子混合によるPLLAスキャホールドの細胞接着性改質」
吉村 柚香(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 1年次生)
中川 脩(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 2年次生)
山本 浩司(生命医科学部 医工学科 教授)
森田 有亮(生命医科学部 医工学科 教授)
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2024年11月16日に開催された、脳科学に関する幅広い研究内容を対象とした脳科学若手の会 第30回秋の談話会において、大学院生やポストドクターが多く発表する中、道本智揮さん(生命医科学部 医情報学科)が最優秀口頭発表デザイン賞を受賞しました。本賞は、研究内容の本質を的確に捉え、多くの参加者にとって理解しやすい発表を行った学生に対して授与されるものです。
道本さんは、アブラコウモリにおける加齢性難聴の有無を検証するため、異なる年齢の個体間で聴覚機能を比較する実験系を構築する研究を行いました。その結果、スナネズミやマウスといった他の主要な実験動物と同様に、聴覚情報に依存する種のコウモリにおいても聴覚機能の年齢間比較が可能であると示しました。さらに、幼少期の母子分離や狭い飼育環境が、聴覚機能の発達に影響を与える可能性も示しました。
アブラコウモリにおける聴性脳幹反応を用いた加齢性難聴の評価
道本 智揮(生命医科学部 医情報学科 4年次生)
橋澤 寿紀(生命医科学研究科 学振特別研究員PD)
西内 唯夏(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程)2年次生)
小林 耕太(生命医科学部 医情報学科 教授)
飛龍 志津子(生命医科学部 医情報学科 教授)
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2024年11月13-15日に行われた計測自動制御学会 システム・情報部門 学術講演会(SSI2024)において、長谷川勘太さん(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 脳神経行動工学研究室)が研究奨励賞を受賞しました。本賞は、計測自動制御における研究の将来を担っていく優秀な若手研究者の研究を奨励するためもうけられています。
長谷川さんは、コウモリが他個体と飛行する際に行う周波数調整行動を模倣した超音波センシング機構を自律走行ロボットに搭載し、その有用性を検証しました。そして、この研究により、コウモリの周波数調整行動が音響的混信を回避する上で有効であることを示す、初めての工学的証拠を提示しました。
超音波センシングによる自走ロボットを用いたコウモリの音響混信回避戦略の構成論的検証
長谷川 勘太(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(後期課程)1年次生)
山田 恭史(公立はこだて未来大学 システム情報科学部 複雑系知能学科 複雑系コース 准教授)
谷口 真七斗(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程)1年次生)
長谷 一磨(富山大学 学術研究部医学系 助教)
佐々木 晋一(株式会社 村田製作所)
浅田 隆昭(株式会社 村田製作所)
飛龍 志津子(生命医科学部 医情報学科 教授)
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2024年12月14日に近畿大学で開催された日本音響学会関西支部 第27回若手研究者交流研究発表会において、高橋果己さん(生命医科学部 医情報学科 脳神経行動工学研究室)が奨励賞を受賞しました。
同賞は、研究交流・相互啓発の活性化を目的として、将来の音響学の発展を担う若手研究者を奨励するため授与されるものです。高橋さんは、コウモリ摸倣エコーロケーションロボットを用いた人を対象にした障害物回避実験を行うことで、超音波を用いた新たな物体認知手段の可能性を示しました。
コウモリ摸倣エコーロケーションロボットを用いた人の物体認知支援の検討
高橋 果己(生命医科学部 医情報学科 4年次生)
布川 貴康(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程)1年次生)
長谷川 勘太(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(後期課程)1年次生)
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藤田桃子さん(生命医科学部 医生命システム学科 再生医学研究室)が、2024年12月13日(金)〜14日(土)に愛媛県松山市にぎたつ会館にて開催された第38回肝類洞壁細胞研究会学術集会〜肝類洞壁細胞がつなぐ基礎と臨床の融合~(当番世話人:愛媛大学大学院医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学教授 日浅陽一先生)において、「マウス肝移植モデルの免疫拒絶反応の長期的観察」について研究発表を行い、最優秀演題賞(40歳以下若手部門)を受賞しました。
肝移植後の免疫拒絶反応は未だ多くの不明点を残しており、そのメカニズムの解明と有効な治療法の開発が重要な研究課題です。研究室では肝動脈再建を伴うマウス肝移植モデルを確立し、長期観察を行い報告しました。藤田さんは、移植された肝臓グラフトに浸潤する免疫細胞や蓄積する細胞外マトリクスの経時的変化について、2,000枚以上の病理スライドの解析を行って、細胞性免疫から液性免疫にスイッチする現象を明らかにしました。
発表後、モデルのテクニカルな点から免疫学的な質問まで多くの先生方にご質問いただき、高い評価をいただきました。
マウス肝移植モデルの免疫拒絶反応の長期的観察
藤田 桃子(生命医科学部 医生命システム学科 4年次生)
澤武 玲那(生命医科学部 医生命システム学科 4年次生)
山本 賢輝(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士課程(前期課程) 1年次生)
東福寺 稜(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士課程(前期課程) 2年次生)
祝迫 惠子(生命医科学部 医生命システム学科 教授)
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岡邑舞子さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 医生命機能研究室)が、2024年12月6日(金)〜7日(土)に昭和大学上条記念館にて開催された第46回心筋生検研究会学術集会〜その心臓は何を物語るのか?~(大会長 昭和大学医学部法医学講座 松山高明先生)において、Young Investigator Award (YIA)候補にノミネートされ、口頭発表の審査によってYIA優秀賞を受賞しました。
心内膜心筋生検法(以下心筋生検)は、経カテーテル的に右室中隔または左室壁の心内膜側から心筋組織をサンプリングして病理診断を可能にする検査法で、心臓病理の重要な診断モダリティーとして我が国で半世紀にわたり発展してきました。本発表では、拡張型心筋症モデル動物として汎用されてきたJ2N-kハムスターの心筋・骨格筋を対象に「イメージング質量分析法」という新しい解析方法を用い、タンパク質・脂質に加えカルシウム・マグネシウム・リン・鉄・銅・亜鉛を含む元素の局在の可視化に成功しました。
このように複数の空間オミクス解析の結果より炎症性拡張型心筋症の免疫代謝学的詳細が明らかとなり新たな病態メカニズムの提案を行なったものです。さらに、最新のMALDI-HiPLEX IHC手法を用いることにより、ハムスターにおいて飛躍的な数のタンパク質の網羅的解析への道筋を示すことに成功しました。大会長はじめ、審査員・学会員の先生がたからも、この空間マルチオミクス解析の成果は、拡張型心筋症にとどまらず、心筋炎や移植症例の急性拒絶反応、サルコイドーシスや薬剤性心筋症、アミロイドーシス、ミトコンドリア脳筋症などの二次性心筋症への応用も期待のできる技術であるため、症例数を増やしてさらなる解析をと励ましの言葉をいただきました。
拡張型心筋症動物モデルの空間マルチオミクス解析
岡邑 舞子(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士課程(前期課程) 2年次生)
奥田 晃士(島津製作所)
山下 修司(生命医科学部 医生命システム学科 助教)
山口 真一(島津製作所)
山本 卓志(島津製作所)
山田 真希(島津製作所)
野口 悟(国立精神・神経医療研究センター)
西野 一三(国立精神・神経医療研究センター)
植田 初江(北摂総合病院・国立循環器病研究センター)
池川 雅哉(生命医科学部 医生命システム学科 教授)
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濵信一郎さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 分子生命化学研究室 2022年度修了、現:国立感染症研究所研究員)、高橋美帆助教(生命医科学部 医生命システム学科 助教)、西川喜代孝教授(生命医科学部 医生命システム学科 教授)らの研究成果が、mBio誌(2024年11月27日付)に掲載されました。
現在使用されているA型インフルエンザウイルス(IAV)治療薬は、ウイルスタンパクを標的としており、このため薬剤耐性が出やすいという問題がありました。濵さんらは、これまでIAVの増殖に関わることが知られている200種を超える宿主側タンパクの一つ、Ca2+-カルモデュリン依存性タンパクキナーゼII(CaMKII)に着目し、独自にCaMKII阻害ペプチド(M3)を開発しました。IAVはマウスに感染すると高い致死性を示しますが、M3は完全にこの致死性を抑制しました。
M3の作用機構を詳細に検討した結果、CaMKIIは感染初期においてこれまでの常識をくつがえす経路でIAV増殖を促進していることと、M3はこの経路を特異的に阻害することで強力な抗IAV活性を示すことを見出しました。これまで、ウイルス感染時にはRIG-Iと呼ばれる自然免疫に関わるタンパクが活性化し、大量のI型インターフェロン(IFN)を産生することで抗ウイルス作用を発揮することが知られていました(図中の古典的RIG-I 経路)。今回、CaMKIIは感染数時間以内に迅速にRIG-Iを活性化することと、この時産生されるIFN mRNAはごく微量であるにもかかわらず、その5’キャップ構造が優先的にIAVのmRNA合成に転用され、IAV増殖に必須の働きをしてしまうことを見出しました。すなわち、ウイルス感染防御に働くRIG-Iには、ウイルス増殖を助けてしまう側面(図中の非古典的RIG-I 経路)があることが初めて示されました。
この感染初期特異的なRIG-I経路の発見は、耐性の問題を克服する新たなインフルエンザ治療薬の創製を大きく推進すると期待されます。
研究内容の詳細は以下の関連情報をご覧ください。
CaMKII-dependent non-canonical RIG-I pathway promotes influenza virus propagation in the acute-phase of infection
Hama S., Watanabe-Takahashi M., Nishimura H., Omi J., Tamada M., Saitoh T., Maenaka K., Okuda Y., Ikegami A., Kitagawa A., Furuta K., Izumi K., Shimizu E., Nishizono T., Fujiwara M., Miyasaka T., Takamori S., Takayanagi H., Nishikawa Ke., Kobayashi T., Toyama-Sorimachi N., Yamashita M., Senda T., Hirokawa T., Bito H., and Nishikawa K*.
*corresponding author
mBio, 2024 Nov.27:e0008724
DOI: 10.1128/mbio.00087-24
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施藝帆さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 分子生命化学研究室)が、2024年11月6日〜8日に神奈川県横浜市パシフィコ横浜で開催された第97回日本生化学会大会において、若手優秀発表賞を受賞しました。
融合タンパクEML4-ALKは、非小細胞肺がんの主要な病原因子です。現在治療薬として、ALKのチロシンキナーゼを阻害する薬剤(TKI)が広く使用されていますが、薬剤耐性が大きな問題となっています。施さんはALKの基質認識部位を標的として、TKI耐性体に対しても強い阻害活性を示すペプチド性化合物を開発しました。本化合物は、マウス皮下にがん細胞を移植した際の腫瘍形成を顕著に抑制することから、本研究結果が高く評価されました。
「基質認識部位を標的とした新規ペプチド性EML4-ALK阻害薬の開発」
高橋 美帆(生命医科学部 医生命システム学科 助教)
原 大幸(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士課程(前期課程) 2018年度修了)
柴田 識人(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
内藤 幹彦(東京大院薬学系研究科 タンパク質分解創薬社会連携講座)
出口 敦子(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
丸 義朗(東京女子医科大学 薬理学講座)
西川 喜代孝(生命医科学部 医生命システム学科 教授)
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生命医科学研究科 医生命システム専攻 寺島俊結さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 分子生命化学研究室)が、2024年11月18日〜19日に茨城県つくば市文部科学省研究交流センターで開催された、第26回腸管出血性大腸菌感染症研究会において、若手奨励賞を受賞しました。
寺島さんは、腸管出血性大腸菌(EHEC)の主要病原因子である志賀毒素Stx2aが、なぜ個体レベルで強毒性を発現するのか、その分子機構について詳細な解析を行いました。その結果、エキソソームと呼ばれる細胞外小胞に乗ったStx2aが強毒性の本体であることと、その産生にはプロテインキナーゼGSK3βが密接に関与していることを明らかにしました。本成果は、GSK3βの阻害が新たなEHEC感染症治療法の確立につながる可能性があるとして、高く評価されました。
「個体強毒性発現に関わるStx2aの細胞外放出機構におけるGSK3βの関与」
高橋 美帆(生命医科学部 医生命システム学科 助教)
平田 慶治(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士課程(前期課程) 2021年度修了)
尾上 舞衣(生命医科学部 医生命システム学科 2018年度卒業)
西川 喜代孝(生命医科学部 医生命システム学科 教授)
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皆さんが生命医科学部で学んだ成果として、学位授与方針で掲げた資質・能力を獲得できたかを分析し把握するため「学びのふり返り」卒業時調査を実施します。卒業予定者は必ず全員が回答した上で、回答報告書を提出するよう、ご協力をお願いいたします。
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2024年10月18日にまつもと市民芸術館にて開催された第11回日本アミロイドーシス学会学術集会(大会長 信州大学医学部神経内科 関島良樹先生)において、吉村陸矢さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 医生命機能研究室)と外山友美子さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 医生命機能研究室 2024年9月修了)が、優秀演題賞を受賞しました。
現在、アルツハイマー病におけるアミロイド病理を対象とした初めての治療薬レカネマブの開始など本領域における臨床・基礎医学研究は、新たな局面を迎えています。本発表では、アルツハイマー病や脳アミロイド血管症の診断や病態解明を目的とした「イメージング質量分析法」という新しい解析方法に加えて、本学と高輝度光科学研究センター及び東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンクとの共同研究によって、ホルマリン固定パラフィン包埋ヒト剖検脳サンプルを用い、上述の質量分析イメージング法に加え、数千枚の位相差CT画像の3D可視化に成功しました。さらに、最新のMALDI-HiPLEX IHC手法を用いることにより、将来は飛躍的な数のタンパク質の網羅的解析への道筋を示すことに成功しました。大会長はじめ、学会員の先生方からも大いに期待される技術であると同時に症例数を増やしてさらなる解析をと励ましの言葉をいただきました。
脳アミロイド血管症脳のX線位相差CTと質量分析イメージング法を統合した3Dマルチモーダル・イメージング法
吉村 陸矢(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士課程(前期課程) 2年次生)
外山 友美子(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士課程(後期課程) 修了)
星野 真人(高輝度光科学研究センター SPring-8)
韮澤 崇(ブルカー・ジャパンK.K.)
西川 元博(栄養病理研究所)
森島 真帆(東京都健康長寿医療センター 高齢者ブレインバンク 神経病理研究部)
齊藤 祐子(東京都健康長寿医療センター 高齢者ブレインバンク 神経病理研究部)
村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 高齢者ブレインバンク 神経病理研究部)
池川 雅哉(生命医科学部 医生命システム学科 教授)
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山本洋さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 分子生命化学研究室2013年度修了)、谷川哲也さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 分子生命化学研究室2014年度修了)、雲井香保里さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 分子生命化学研究室2016年度修了)、髙橋美帆助教、西川喜代孝教授らによる二つの研究成果が、Biochemical and Biophysical Research Communications誌にそれぞれ掲載されました。
山本さんと雲井さんは、発展途上国を中心に蔓延しているコレラ制圧を目的とし、コレラ菌が産生するコレラ毒素(Ctx)の毒性を阻害するペプチド性化合物(NRR-tet)を同定しました(論文1)。NRR-tet の薬効を評価するためのヒト下痢症のモデルとして、マウス腸管内にCtxを直接投与する腸管ループモデルを使用しました。Ctxは腸管上皮細胞の傷害を引き起こし、腸管内に著しい水分貯留を誘導しますが、NRR-tetはこれらの症状を顕著に抑制することを見出しました(下図)。さらに、NRR-tetのCtx阻害機構を詳細に調べたところ、NRR-tetはCtxの受容体結合部位に結合することで、Ctxの細胞内輸送異常を誘導し、Ctxをリサイクリングエンドソームと呼ばれるオルガネラに顕著に貯留させること、その結果細胞内での毒性発現を阻害することを見出しました。
発展途上国で問題となっている乳児下痢症や、日本で見られる旅行者下痢症の主要な原因菌である腸管毒素原生大腸菌(ETEC)は、易熱性エンテロトキシン(LT)を産生します。LTはCtxと非常によく似た構造と機能を有しています。谷川さんは、LTの受容体結合部位に結合し、その細胞毒性ならびに腸管ループモデルでの水分貯留を顕著に阻害するペプチド性化合物(GGR-tet)を同定しました(論文2)。GGR-tet はNRR-tet と1アミノ酸の違いしか持たないにも関わらず、Ctxの細胞毒性はほとんど阻害しません。このことは、構造と機能が非常に類似しているCtxとLTに対し、それぞれに特異的な阻害剤が創出可能であることを示しています。
現在、抗生物質に対して耐性を示すコレラ菌やETECの出現が世界的な問題となっており、本研究で得られたペプチド化合物は、新たな治療薬候補となることが期待されます。
研究内容の詳細は以下の関連情報をご覧ください。
Tailored multivalent peptide targeting the B-subunit pentamer of Cholera toxin inhibits its intestinal toxicity by inducing aberrant transport of the toxin in cells.
Miho Watanabe-Takahashi*#, Kahori Kumoi*, Hiroshi Yamamoto*, Eiko Shimizu, Jun Motoyama, Takashi Hamabata, and Kiyotaka Nishikawa#
*Equal contributor, #Corresponding author
A tetravalent peptide efficiently inhibits the intestinal toxicity of heat-labile enterotoxin by targeting the receptor-binding region of the B-subunit pentamer
Miho Watanabe-Takahashi⁎#, Tetsuya Tanigawa⁎, Takashi Hamabata, Kiyotaka Nishikawa#
*Equal contributor, #Corresponding author
Biochemical and Biophysical Research Communications
DOI: 10.1016/j.bbrc.2024.150769
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2024年9月18~20日に開催された日本行動神経内分泌研究会 第38回学術集会において、奈良紫月さん(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 脳神経行動工学研究室)が奨励賞を、西堀諒さん(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 脳神経行動工学研究室)が優秀発表賞を受賞しました。本賞は、優れた口頭発表を行った学生に対して授与されるものです。
奈良さんは、アブラコウモリの母親が自身の仔のみに対して選択的な養育行動を示すことと、その誘発要因が仔の発声情報であることを明らかにしました。また、母子の接触刺激が養育行動のモチベーションに影響を与えることを新たに発見しました。
西堀さんは、育児放棄経験が成長後のコミュニケーションに及ぼす影響を解明するため、スナネズミをモデルとした研究を行いました。その結果、育児放棄経験が他者と友好的な関係を築く能力を低下させることを明らかにしました。さらに、健常個体との社会的相互作用により社会的不安が改善する可能性も示しました。
アブラコウモリにおける養育行動のモチベーション −音声・行動・生理指標からの多角的アプローチ−
奈良 紫月(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 1年次生)
橋澤 寿紀(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(後期課程) 2024年9月修了)
西内 唯夏(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 2年次生)
小林 耕太(生命医科学部 医情報学科 教授)
飛龍 志津子(生命医科学部 医情報学科 教授)
幼少期のストレス経験が成体間の社会的コミュニケーションに及ぼす影響
西堀 諒(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(後期課程) 2年次生)
中川 喜嵩(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 2年次生)
木下 夢(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 1年次生)
新家 一樹(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(後期課程) 3年次生)
玉井 湧太(チュービンゲン大学/慶應義塾大学 学振特別研究員PD)
伊藤 優樹(研究開発推進機構 助教)
小林 耕太(生命医科学部 医情報学科 教授)
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同志社大学 生命医科学部の渡辺公貴教授、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構、株式会社タカラトミー、ソニーグループ株式会社の共同開発による超小型月面探査ローバLEV-2(SORA-Q)が、第11回ロボット大賞において文部科学大臣賞を受賞しました。
今回の受賞は、LEV-2とともに月面で活動したLEV-1と共同での受賞です。
LEV-2(SORA-Q)はLEV-1と共に、小型月着陸実証機SLIMに搭載され、2024年1月20日にSLIMから放出され、月面で活動をしました。LEV-2が撮影した月面写真を、LEV-1が地球へデータを送信するという世界で初めて2機の連携により、月面での活動の様子を地球に送信することに成功しました。また,世界初の完全自律ロボットによる月面探査を行いました.
今回の受賞では、完全自律での月面活動と、LEV-2(SORA-Q)においては世界最小・最軽量(質量228g)の月面探査ロボットであることが評価され、「今後の宇宙開発、ひいては科学技術の発展に大きなインパクトを与えるものである」と称賛されました。
また、LEV-2(SORA-Q)は2024年度 日本ロボット学会 ロボット活用社会貢献賞も受賞しました。この賞は、ロボットを普及・浸透させ、社会の変革に大きく貢献した(しうる)活動や知見に贈られます。LEV-2(SORA-Q)の月面での活動成功に加えて、おもちゃとしてロボットの魅力を普及したことが評価されました。
LEV-2(SORA-Q)の開発では、ソニーグループ株式会社がソフトウェア開発を担当しましたが、その担当者である安藤 辰伸さんは本学・工学部(現在の理工学部)の卒業生です。
渡辺先生、安藤さん、LEV-2(SORA-Q)の開発に関わられた皆さま、受賞おめでとうございます!
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リエゾンオフィス(研究開発推進課-京田辺) TEL:0774-65-6223
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2024年9月5日に開催されました 第23回 FIT2024 情報科学技術フォーラムにて、桑野亘(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 非線形応用数理研究室)がFIT奨励賞を受賞しました。本賞は本大会に一般発表で参加したものに対して、研究が学術奨励のために有為であると認めた研究発表に対して表彰されます。
桑野さんの研究は、脳の神経細胞の動態シミュレーションを実行し、脳機能の解明、未知な脳疾患の治療法の提案となっています。ヒトの脳は機能や構造について解明されていないことが多い分野です。そこで、脳の神経細胞の電位変化を数理モデル化し、シミュレーションを実行し、神経細胞の再現を行うことで、身体を侵襲しない脳機能の解明を目指しています。
本研究では、先行研究にて作成されたモデルの再現性の向上と汎用性を拡大するために、実際の神経細胞の活動と比較して、シミュレーションにおけるパラメータを考慮し、新たな神経細胞群の活動の再現を行いました。また、安静状態で生じるアルファ波や活動状態で生じるベータ波などの脳波と本研究のシミュレーション結果を対応させて比較しました。
今後の研究は、さらなる脳活動の再現の拡大と、脳の神経細胞の関わりからさらに広く、脳領域同士の関わりを考慮に入れて、脳活動の再現を行っていきます。このシミュレーションが可能となると、異常な脳活動によって生じるてんかんやアルツハイマー病発症の原因の解明が期待できます。また、神経細胞同士の信号伝達を理解することで記憶のプロセスや人工知能への応用も可能となります。
神経細胞の膜電位の同期シミュレーション
Simulation
of Membrane Potential Synchronization in Neurons
桑野 亘(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 1年次生)
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