生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 バイオメカニクス研究室の八木愛花さんが、2025年5月31日~6月1日に日本大学工学部で開催された第74期学術講演会の発表で、日本材料学会優秀講演発表賞を受賞しました。
【八木愛花さんのコメント】
この度、優秀講演発表賞をいただくことができ、大変光栄に思います。
廃棄物であるパイナップルの葉を有効活用した複合材料の開発は、環境負荷の低減につながると期待しています。
「パイナップル葉繊維/バイオベースポリアミド樹脂の機械的特性に及ぼす繊維へのアルカリ処理の影響」
八木 愛花(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 医工学コース 博士課程(前期課程) 2年次生)
田中 和人(生命医科学部 医工学科 教授)
藤井 透(TRAMI, 同志社大学 先端複合材料研究センター)
渡辺 公貴(生命医科学部 医工学科 教授)
川口 正隆(生命医科学部 医工学科 教授)
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2025年6月12日、吉田創志さん(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 脳神経行動工学研究室)が、村田学術振興・教育財団の研究者海外派遣援助に採択されました。
本助成は、日本の学術および文化の向上・発展に資する研究に対し、海外で開催される国際会議等での研究発表を支援することを目的としています。吉田さんは、コウモリのエコーロケーション行動に関する研究成果を、9月にデンマークで開催される国際生物音響学会にて発表する予定です。
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生命医科学研究科 医生命システム専攻 分子生命分野 安西聖敬さん(2022年度修了)、髙橋美帆助教、西川喜代孝教授らの研究成果が、Communications Biology誌に掲載されました。
骨の恒常性は、破骨細胞による骨破壊と骨芽細胞による骨形成のバランスで維持されており、このバランスが骨破壊側に傾くと骨粗鬆症や関節リウマチなど様々な骨破壊疾患が引き起こされます。そこで、破骨細胞の働きを抑制できればこれら疾患の治療につながると期待されます。安西さんらは、造血幹細胞から破骨細胞への分化を効率よく阻害する多価型ペプチド、WHD-tetを開発しました。さらに、WHD-tetはマウスを用いた骨破壊モデルでも効率よく骨密度の減少を抑制することを見出しました(図1)。
造血幹細胞が破骨細胞に分化するためには、破骨細胞分化因子であるRANKLが細胞表面に存在するRANKに結合することが必須です。この時、RANKの細胞質側にアダプター分子であるTRAF6が会合し、分化に必要な様々なシグナルが発生します。これらシグナルの重要性は分化段階によって異なります。安西さんらは、WHD-tet は分化の非常に遅い段階で働くこと、この時RANKとTRAF6の相互作用を絶妙に調節することによって、MKK3と呼ばれるキナーゼのTRAF6へのリクルートのみを特異的に阻害し、最終分化に必要なシグナルを効率よく抑制していることを見出しました(図2)。WHD-tet はタンパク質間の相互作用を微細に調節することで下流シグナルの量と質を制御する、新たなタイプの治療薬として期待されます。
研究内容の詳細は以下の関連情報をご覧ください。
Clustered peptide regulating the multivalent interaction between RANK and TRAF6 inhibits osteoclastogenesis by fine-tuning signals
Anzai M., Watanabe-Takahashi M., Kawabata H., Masuda Y., Ikegami A., Okuda Y., Waku T., Sakurai H., Nishikawa Ke., Inoue J., and Nishikawa K*
*Corresponding author
Communications Biology, 2025 Apr 22;8(1):643
doi: 10.1038/s42003-025-08047-2
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生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 バイオマテリアル研究室の吉村柚香さんが、2024年12月14日~15日に横浜国立大学で開催された日本機械学会第35回バイオフロンティア講演会の発表(内容に関しては若手優秀講演賞受賞時の報告参照)で、日本機械学会若手優秀講演フェロー賞を受賞しました。
【吉村柚香さんのコメント】
このたび、日本機械学会若手優秀講演フェロー賞という大変名誉ある賞をいただくことができ、大変光栄に思っております。
学部時代から取り組んできた本研究テーマは、うまくいかずに悩むことや苦しい時期もありましたが、こうして評価していただけたことをとても嬉しく感じています。
日頃よりご指導いただいている森田教授、山本教授をはじめ、切磋琢磨しながら共に研究に励んできた研究室の皆さん、そして本研究に関わってくださったすべての皆様に、心より感謝申し上げます。
「ゼラチンマイクロ粒子混合によるPLLAスキャホールドの細胞接着性改質」
吉村 柚香(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 医工学コース 博士課程(前期課程) 1年次生*)*:発表時の学年、現2年次生
中川 脩 (生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 医工学コース 博士課程(前期課程) 2年次生*)*:発表時の学年、現博士課程(後期課程) 1年次生
山本 浩司(生命医科学部 医工学科 教授)
森田 有亮(生命医科学部 医工学科 教授)
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生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 バイオマテリアル研究室の出口航至さんが、2025年5月24日~25日に慶應義塾大学日吉キャンパスで開催された第37回バイオエンジニアリング講演会において、優秀ポスター表彰を受賞しました。
出口航至さんは、ヒトiPS細胞由来心筋スフェロイドに対する接触変形が拍動能に影響を与えるメカニズムに関して、スフェロイド内の局所的な変形が組織全体の電気的興奮と機械的収縮の協調作用を強化することを明らかにしました。この結果から培養心筋組織を移植する際の変形状態が心臓再生医療の治療効果に影響を与える可能性が示唆されました。
学会から評価していただき大変光栄に思います。
発表の場では多くの先生方から貴重な意見や質問をいただき、大変刺激を受けました。
本受賞を励みに今後も良い報告ができるよう研究を発展させていきたいと思います。
「iPS細胞由来心筋スフェロイドの電気機械結合に及ぼす接触変形の影響」
中野 健(横浜国立大学 大学院環境情報研究院 教授)
大久保 光(横浜国立大学 大学院環境情報研究院 准教授)
森田 有亮(生命医科学部 医工学科 教授)
山本 浩司(生命医科学部 医工学科 教授)
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生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の大山裕貴さん(2021年3月修了)、伊東優さん(2025年3月修了)らの研究成果が、「Investigative Ophthalmology & Visual Science」に掲載されました。
このたび、本学の研究グループは、角膜移植の原因の約40%を占める眼疾患であるフックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)の新たなマウスモデルの作製に世界で初めて成功しました。本研究は、伊川正人教授(大阪大学・微生物病研究所)との共同研究による成果です。
FECDは、角膜内皮細胞が徐々に減少し、角膜が白く濁ることで視力が低下する病気です。この病気の原因として最も多く知られているのが、TCF4遺伝子内の三塩基繰り返し配列の異常な伸張です。
研究グループは、ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)を用いて、この特徴的な遺伝子変異を持つマウスを作製しました。その結果、このマウスがFECDの典型的な症状を再現することを明らかにしました。この成果により、TCF4遺伝子の三塩基繰り返し配列の伸張が、単独でもFECDを引き起こすのに十分であることが世界で初めて証明されました。今回の研究成果は、FECDの病態メカニズムの解明に貢献するだけでなく、今後の治療薬の開発や新たな治療法の探索にもつながる重要な一歩であると考えています。
【大山裕貴さんのコメント】
TCF4遺伝子のリピート配列は、患者さんの遺伝子で高頻度に認められることから、長年にわたりFECDの病態に関与していると考えられてきました。しかし、リピート配列が具体的にどのような影響を及ぼしているのかは不明でした。本研究では、このリピート配列を組み込んだマウスを遺伝子改変技術によって作製し、世界で初めてリピート配列によるFECD病態の再現に成功しました。リピート配列は非常に取り扱いが難しく、特にマウスへの導入は困難を極めましたが、粘り強く取り組んだ結果、病態を示すモデルマウスが誕生したときは、本当に感慨深い瞬間でした。
このモデルマウスの誕生により、TCF4のリピート配列がどのようにして病態を引き起こすのか、その分子メカニズムを今後さらに解明していくことが可能になります。そして、メカニズムが明らかになれば、新薬開発において、より有効なターゲットの特定が期待されます。基礎研究が長年の謎を解き明かし、臨床応用へと繋がる可能性を実感できた、非常にやりがいのあるプロジェクトでした。
私が所属したティッシュエンジニアリング研究室は、こうした基礎研究から医学の進歩へとつながる研究プロセスを自らの手で実践できる貴重な環境です。基礎から応用に至る一連の流れを実際に経験できる研究室は限られており、その中で研究に打ち込めたことは、私にとって大きな財産となりました。研究室での経験を通じて、自分が本当に目指したい道、たとえば、基礎研究に取り組むのか、製薬の現場に関わるのか、あるいは医療製品の設計・開発の分野に進むのかを、深く考えることができました。将来の進路を見据えるうえでも、非常に意味のある大学生活を送ることができたと感じています。
最後になりましたが、本プロジェクトにお力添えいただいたすべての皆様に心より感謝申し上げます。
【伊東優さんのコメント】
この度、修士課程での研究成果を論文として掲載できることを心から嬉しく思います。
視力を失う不安を抱える世界中の患者さんのために、少しでも希望の光となる研究に携わることができたことに深い意味を感じています。FECDは多くの方が角膜移植を必要とする深刻な疾患でありながら、これまで適切な動物モデルが存在せず、病態メカニズムの解明や治療法開発が困難でした。今回のマウスモデル作製により、患者さんの苦痛を和らげ、視力を守る新たな治療法への扉が開かれたと考えております。
この研究は単なる学術的な成果にとどまらず、実際に困っている患者さんの生活の質を向上させる可能性を秘めています。困難でありながらも、同時に人々の未来に直接的な希望をもたらすこのような研究に思いっきり打ち込める環境がティッシュエンジニアリング研究室にあったからこそ、今回の成果を得ることができました。後輩たちには、ぜひこの素晴らしい環境で患者さんの希望となる医学研究に挑戦していただきたいと願っています。
私は現在、IT企業でヘルスケア領域のお客様を対象とした業務に携わっており、卒業後も医療分野との関わりを持ち続けています。大学での研究経験を糧に、一人でも多くの患者さんの笑顔のため、そして世界の医学発展に貢献できるよう、これからも日々精進してまいります。
本研究の詳細な内容は、以下をご覧ください。
Generation of a Mouse Model of Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy by Knock-in of CTG Trinucleotide Repeat Expansion in the TCF4 Gene
Yuki Oyama*, Suguru Ito*, Taichi Yuasa, Mizuki Ueda, Satoshi Chiba, Tatsuya Nakagawa, Ayaka Izumi, Masahito Ikawa, Noriko Koizumi, and Naoki Okumura
*共同第一著者
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2024年6月1-2日に帝京大学八王子キャンパスで開催された第22回日本認知神経科学会において、今井裕大さん(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 脳神経行動工学研究室 2024年度修了)が優秀発表賞「発表力評価部門」を受賞しました。同賞は、分野の発展に寄与することを目的とし優秀な研究を奨励する目的で若手研究者に与えられます。
今井裕大さんは、言語学習における認知心理学的基盤である「音象徴」(特定の音が特定の印象を喚起する感覚現象)を対象に研究を行いました。3歳、5歳、7歳の幼児および成人を被験者として物体命名課題を実施し、年齢による音象徴感受性の違いを検討しました。その結果、音象徴の発達は言語発達よりも遅れることが示されました。これは、幼児期には音象徴の感受性と言語能力が相互に影響を及ぼしながら発達する可能性を示唆します。
幼児期における音象徴の発達:3歳〜7歳を対象とした物体命名実験
今井 裕大(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 2024年度修了)
渡邊 智美(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 2022年度修了)
尾形 麻衣(生命医科学部 医情報学科 2023年度卒業)
村井 翔太(東京大学国際高等研究所 ニューロインテリジェンス国際研究機構)
野口 瑞生(生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 2022年度修了)
松本 誠 (生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 博士課程(前期課程) 2019年度修了)
加藤 正晴(赤ちゃん研究センター 准教授)
小林 耕太(生命医科学部 医情報学科 教授)
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2025年5月24日に和歌山県立医科大学伏虎キャンパスにて開催された第71回日本生化学会近畿支部例会において、石橋彩夏さん(生命医科学研究科 医生命システム専攻 遺伝情報研究室)の発表が、優秀発表賞を受賞しました。本発表では、Nrf3がオートファジーを誘導し、MHC-I分解を介してがん免疫を抑制していることを明らかにしました。
【石橋彩夏さんのコメント】
このたび優秀発表賞をいただくことができ、大変嬉しく思っております。今回の受賞は、研究室全体で日々積み重ねてきた取り組みや、先生方・先輩方の的確なご指導、そして発表練習に何度も付き合ってくれた同期・後輩の支えがあってこそだと思っております。日頃から支えてくださる研究室の皆さまに、心より感謝申し上げます。今回の経験を励みに、今後も一層研究に真摯に取り組んでいきたいと思います。
転写因子Nrf3によるMHC-I分解を介したがん免疫抑制の検討
石橋 彩夏(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士課程(前期課程) 1年次生)
牧野 安優花(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士課程(前期課程)2年次生)
温品 美綺(生命医科学研究科 医生命システム専攻 2024年度修了)
和久 剛(生命医科学部 医生命システム学科 准教授)
小林 聡(生命医科学部 医生命システム学科 教授)
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生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の堤駿斗さん(博士前期課程 1年次生)が、2025年5月4日~8日にアメリカ・ソルトレイクシティで開催された世界最大規模の視覚・眼科学会であるARVO(The Association for Research in Vision and Ophthalmology)において、トラベルグラント(Travel Grant)を受賞しました。
ARVOトラベルグラントは、優秀な研究発表を行う若手研究者を対象とした国際的な支援制度です。世界中から応募される研究の中から、特に革新性と臨床的意義が高い研究に対して授与され、学会参加のための旅費支援が行われます。眼科学・視覚科学分野における次世代研究者の育成を目的とした名誉ある賞として知られています。
【堤駿斗さんのコメント】
この度は名誉あるARVOトラベルグラントを受賞でき、大変光栄に思います。フックス角膜内皮ジストロフィで苦しむ患者さんの治療法開発に向けて、今回作製したマウスモデルが重要な研究ツールになると信じています。小泉教授や奥村教授、先輩方がこれまで積み上げてこられた研究成果があったからこそ、この受賞に繋がったと思います。今後も、より良い治療法の確立を目指して研究に邁進していきたいと思います。本研究に関わってくださった皆様に心より感謝申し上げます。
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通常、水溶性のタンパク質が脂質で出来た細胞膜を超えて細胞外に分泌されるためには、小胞体や分泌小胞を経由して分泌されます。一方、細胞質に存在するタンパク質が分泌される経路は非典型的分泌経路と呼ばれますが、どのような機構で分泌されるかは不明な点が多く残されていました。
今回、同志社大学大学院生命医科学研究科 教授 浦野泰臣、教授 野口範子、助手Biplab Kumar Dashらの研究グループは、パーキンソン病やがん患者で血液中に分泌されることが知られるPARK7/DJ-1というタンパク質が、酸化ストレス下においてオートファジー機構を利用して分泌されることを示しました。特にリソソームオートリソソームの融合がPARK7の細胞外への分泌に重要であることを新たに発見し、“分泌性オートリソソーム”という概念を提案しました。またシャペロン介在性オートファジーと呼ばれる機構によりPARK7はリソソーム内に運ばれることや、分泌性オートリソソームと細胞膜の融合に必要な膜融合タンパク質であるSNARE複合体の新しい組み合わせも見出しました。これらの成果は、オートファジーによるタンパク質の分泌機構に着目した神経変性疾患やがん等の新規治療法への応用に役立つことが期待されます。
著者: Biplab Kumar Dash, Yasuomi Urano, Yuichiro Mita, Yuki Ashida, Ryoma Hirose, Noriko Noguchi
DOI: 10.1073/pnas.2414790122
Biplab Kumar Dash
同志社大学大学院 生命医科学研究科 外国人留学生助手
研究分野:神経変性疾患 / 細胞内輸送 / オートファジー
同志社大学大学院 生命医科学研究科 教授
研究分野:神経変性疾患 / 細胞死 / 脂質代謝
同志社大学大学院 生命医科学研究科 教授
研究分野:酸化ストレス/ ビタミン / 生活習慣病
同志社大学プレスリリース https://www.doshisha.ac.jp/news/detail/001-26Qmmn.html
同志社大学英語トップページhttps://www.doshisha.ac.jp/news/detail/001-OL8bZI.html
EurekAlert! https://www.eurekalert.org/news-releases/1084893
同志社大学グローバルサイトhttps://research.doshisha.ac.jp/news/news-detail-76/
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東優人氏(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士後期課程3年次生)、生野幹太氏(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士前期課程1年次生)、角田伸人氏(生命医科学部 准教授)、舟本聡氏(生命医科学部 教授)、宮坂知宏氏(日本大学 薬学部 教授)、斎藤貴志氏(名古屋市立大学 医学部 教授)、西道隆臣氏(理化学研究所 チームリーダー)の共同研究成果が、「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)患者の脳内では、これまでに、次の2つがわかっています。
1)アミロイドbタンパク質(Ab)が蓄積し、老人斑という凝集物が神経細胞の外側に形成されます。
2)タウタンパク質は、過剰なリン酸化を受けて神経細胞の内側に蓄積します。
しかしながら、細胞内外で蓄積するこれらの関係性については、いまだに解明されておりません。東さんらは、凍結組織切片における新たなリン酸化タンパク質を検出する方法を開発し、事前に特許を取得しました(特開2020-038192)。この手法を用いると、斎藤先生と西道先生が開発したアルツハイマー病モデルマウスのマウス脳では、老人斑の中心にリン酸化を受けたタウタンパク質が存在することが明らかとなりました(図1)。これまでの一般的な組織学的解析方法では、同じモデルマウス脳でも老人斑の中心や脳組織全体にリン酸化タウタンパク質は検出できておりません。特許を取得した解析方法のみ、リン酸化タウタンパク質の検出が可能となりました。細胞内外に別々に蓄積すると考えられてきたAbとタウタンパク質ですが、実は一緒に凝集していたという大きな発見へ至りました。また生野さんは、この方法を使いタウタンパク質の遺伝子を欠損したアルツハイマー病モデルマウス脳を解析した結果、老人斑のみ検出されることがわかりました(図2)。これらの研究成果は、『アミロイドカスケード仮説』*を強く支持する結果であります。今後は、この手法によって、ヒト組織におけるアルツハイマー病発症機序を解明できる可能性と、タウタンパク質以外のリン酸化を受けたタンパク質についての組織学的解析が可能となりました。
*アミロイドカスケード仮説
アルツハイマー病発症へ至る脳内では、先に老人斑が形成され、その後にタウタンパク質が凝集するという仮説が提唱されている。多くの研究者はこの仮説を支持しており、現在のアルツハイマー病に対する治療もこの仮説に基づいている。
High Affinity Staining for Histological Immunoreactivity revealed phosphorylated tau within amyloid-cored plaques in the brain of AD model mice.
東優人、生野幹太、斎藤貴志、西道隆臣、宮坂知宏、角田伸人、舟本聡
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X25007399
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生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の湯淺太智さん(博士前期課程 2年次生)らの研究成果が、「Scientific Reports」に掲載されました。
本研究は、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学眼科および京都府立医科大学ゲノム医科学との共同研究による成果です。
フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)は目の角膜が濁る病気で、TCF4遺伝子の三塩基リピート(TNR)拡大が最も一般的な遺伝的リスク因子とされています。この遺伝子異常は、遺伝子情報を読み取る際の「スプライシング」と呼ばれる過程に影響を与えると考えられています。
湯淺さんらは、TCF4遺伝子のTNR拡大がある患者とない患者の角膜内皮細胞を比較し、遺伝子の読み取りパターンにどのような違いがあるかをコンピューターで解析しました。その結果、健康な人とFECD患者の間で遺伝子の読み取りパターンに明確な違いがあることがわかりました。特に「エキソンスキッピング」と呼ばれる現象が全体の約50%を占め、この変化がタンパク質の構造に大きな影響を与えていることが明らかになりました。
この発見は、FECDの発症メカニズムの解明に役立ち、将来的には新しい治療法の開発につながる可能性があります。
私たちの研究では、フックス角膜内皮ジストロフィという目の病気において、遺伝子の読み取り方に特徴的な異常があることを発見しました。特に、三塩基繰り返し配列の伸長という遺伝子変異を持つ患者さんでは、独特の異常パターンが見られました。この発見は病気のメカニズム解明に重要な手がかりとなり、新しい治療法の開発につながると期待しています。ご指導・ご支援いただいた先生方、共同研究者の皆様に心より感謝申し上げます。
Comprehensive analysis of splicing variants in corneal endothelial cells of patients with Fuchs endothelial corneal dystrophy
Taichi Yuasa, Yuichi Tokuda, Masakazu Nakano, Kei Tashiro, Theofilos Tourtas, Ursula Schlötzer-Schrehardt, Friedrich Kruse, Noriko Koizumi, Naoki Okumura
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生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の岡惟月さん(2025年3月修了)らの研究成果が、「Scientific Reports」に掲載されました。
本研究は、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学との共同研究による成果です。
フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)は角膜が濁って見えにくくなる目の病気で、現在は角膜移植手術で治療されています。この病気では、角膜の裏側にある内皮細胞が減少し、角膜の裏側に特殊な物質が溜まることで視力が低下します。
岡さんらの研究チームは、コンピューターを使った薬剤スクリーニングという方法で、この病気の治療に効果がある可能性のある薬を探しました。大量の薬の候補から、病気に関わる遺伝子の異常を改善できるものを絞り込みました。
その結果、LDN193189とセルコスポリンという2つの化合物が、病気の細胞で異常に増えている物質の産生を抑え、細胞の中で起こる異常な物質の蓄積も減らすことがわかりました。これらの効果は、将来的に角膜移植の代わりになる新しい治療法につながる可能性があります。
本研究は、私が研究室に配属されて最初に取り組んだテーマです。当時、細胞を用いた実験が思うように進まず、試行錯誤の連続でした。しかし、小泉教授や奥村教授をはじめ、研究補助員の方々、面倒見の良い先輩方や同期、後輩からの支えがあり、最後まで取り組むことができました。本研究を通して、周囲を頼りながら粘り強く取り組む力、相手にわかりやすく伝える力を磨くことができたと感じています。本研究成果は、国内外の学会で発表する機会にも恵まれ、この度、論文掲載という形で報告できたことを大変嬉しく思います。現在、医療機器メーカーにて、臨床検査薬の開発業務に携わっています。研究室で培った経験や知識を活かし、人々の健康を支える一員として活躍できるよう努めてまいります。本研究を進めるにあたりご指導・ご支援くださった全ての皆様に、改めて深く感謝申し上げます。
A feasibility of computational drug screening for Fuchs endothelial corneal dystrophy
Itsuki Oka, Yoshiaki Toyokawa, Kouta Imai, Tatsuya Nakagawa, Theofilos Tourtas, Ursula Schlötzer-Schrehardt, Friedrich Kruse, Noriko Koizumi, Naoki Okumura
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生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の稲垣蒼一朗さん(2025年3月修了)らの研究成果が、「Scientific Reports」に掲載されました。
本研究は、フランスのジャン・モネ大学、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学、京都府立医科大学との共同研究による成果です。
フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)は、両眼に現れる進行性の角膜内皮疾患で、「グッタ」と呼ばれる細胞外マトリックスの異常な沈着が特徴です。この病気によって視力が低下し、角膜移植が必要になることがあります。
稲垣さんらの研究チームは、FECD患者の角膜の成分と構造を詳しく調べました。タンパク質解析と遺伝子解析を組み合わせることで、FECD患者では19種類の分子が健康な人と比べて増加していることを発見しました。そのうち13種類はFECD患者の角膜に特徴的に生じるグッタの主たる構成成分である細胞外マトリックスに関連するタンパク質でした。さらに、本研究ではこれらのタンパク質が角膜内でそれぞれ独特の分布パターンを示すことを明らかにしました。
この研究結果は、FECDの病態の解明や、さらに進行度合いをより正確に評価し最適な手術計画を立てるために有用なものです。
私たちの研究では、フックス角膜内皮ジストロフィという目の病気で、角膜の裏側に異常に蓄積するタンパク質の種類と分布を詳しく調べました。これらのタンパク質は場所によって異なる分布を示し、病気の進行に重要な役割を果たしていることがわかりました。この発見は、病気の進行度をより正確に診断し、最適な治療法を選ぶのに役立つと考えています。ご指導・ご支援いただいた先生方、共同研究者の皆様に心より感謝申し上げます。大学院在学中にこのような国際的な研究プロジェクトに加えていただいた事はとても重要な経験となりました。
Comprehensive identification of dysregulated extracellular matrix molecules in the corneal endothelium of patients with Fuchs endothelial corneal dystrophy
Soichiro Inagaki, Hanielle Vaitinadapoule, Taichi Yuasa, Tatsuya Nakagawa, Masaya Ikegawa, Yumiko Toyama, Takashi Nirasawa, Yuichi Tokuda, Masakazu Nakano, Kei Tashiro, Theofilos Tourtas, Ursula Schlötzer-Schrehardt, Friedrich Kruse, Ines Aouimeur, Zhiguo He, Philippe Gain, Noriko Koizumi, Gilles Thuret, Naoki Okumura
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生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の稲垣蒼一朗さん(2025年3月修了)らの研究成果が、「Experimental Eye Research」に掲載されました。
本研究は、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学との共同研究による成果です。
フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)は角膜内皮細胞の変性と細胞外マトリックスの異常蓄積を特徴とする眼疾患で、角膜移植の最も多い原因です。今回の研究では、FECD患者の角膜内皮細胞におけるスプライシング(遺伝子情報の編集過程)の異常、特にイントロン保持と呼ばれる現象に着目しました。解析の結果、フィブロネクチンという、FECDに特徴的な角膜の裏側の構造物の主要成分の遺伝子で、イントロン保持の低下が見られました。興味深いことに、このイントロン保持の減少と、FECD患者の角膜内皮におけるフィブロネクチンの過剰発現には関連があることが判明しました。この発見は、スプライシングの異常がFECDの病態形成にどのように関わるかを示す重要な知見であり、将来的な治療法開発につながる可能性があります。
本研究ではFECDの発症原因を探求するため、イントロン領域にのみ焦点を当てて行った初めての研究であり、発症原因の特定と将来の新規治療法開発に向けた重要な一歩です。
本研究で明らかとなった事実は、今後の病態解明の手掛かりになると考えています。
この場をお借りして、ご指導・ご支援を賜りました先生方、共同研究者の皆様に深く御礼申し上げます。
TCF4 expansion–associated loss of FN1 intron retention drives extracellular matrix accumulation in Fuchs endothelial corneal dystrophy
Soichiro Inagaki, Taichi Yuasa, Theofilos Tourtas, Ursula Schlötzer-Schrehardt, Friedrich Kruse, Noriko Koizumi, Naoki Okumura
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