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生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻修了生 赤木歩さんらの研究成果が、「Graefe's Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology」に掲載されました。
生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の赤木歩さん(2025年3月修了)らの研究成果が、「Graefe's Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology」に掲載されました。
本研究は、島根大学医学部眼科学講座 谷戸正樹教授との共同研究による成果です。
本研究は、緑内障手術後の角膜内皮細胞への長期的な影響を調査したものです。
緑内障は眼圧が上昇することで視神経が障害される病気で、治療として眼圧を下げる手術(濾過手術)が行われることがあります。この手術は眼圧を効果的に下げることができますが、角膜の内側にある内皮細胞への影響が懸念されています。角膜内皮細胞は角膜の透明性を保つ重要な細胞で、一度失われると再生しません。
研究チームは、濾過手術を受けた136名の患者さんのデータを分析しました。特筆すべきは、電子カルテに記載された文章を自然言語処理技術を用いて、36,561回分の診察記録から必要な情報を抽出・解析したことです。これにより、従来は困難だった大規模かつ長期的なデータ分析が可能になりました。
研究の結果、手術後約1,500日にわたって、角膜内皮細胞は100日あたり約1%の割合で徐々に減少することが明らかになりました。また、手術後の眼圧が低い患者さんほど、内皮細胞の減少が大きいという予想外の発見もありました。
この研究成果は、緑内障手術後の患者さんの長期的な管理において重要な知見が得られたことに加えて、電子カルテの自動解析技術を活用した医療データ研究の新たな可能性を示した点でも意義深い研究となりました。

【赤木歩さんのコメント】
「私たちの研究では、緑内障手術を受けた患者さんの長期的な経過を、電子カルテの自動解析技術を用いて詳しく調査しました。4年以上にわたる追跡調査の結果、手術後の眼圧が低い患者さんほど角膜内皮細胞の減少が大きいという、これまで知られていなかった重要な発見をすることができました。この研究成果は、手術後の患者さんの管理方法を改善し、より良い治療成果につながることを期待しています。また、自然言語処理技術を医療研究に応用するという新しい手法を確立できたことも大きな成果だと考えています。現在は社会人として働いていますが、大学院で学んだデータ解析の手法や研究における論理的思考は、日々の業務においても大変役立っていると感じています。ご指導いただいた先生方、共同研究者の皆様、そして研究にご協力いただいた患者さんに心より感謝申し上げます。」
論文情報
タイトル
Long-term corneal endothelial cell loss after filtration surgery: Analysis using natural language processing
著者
Ayumu Akagi1, Kaito Narimoto1, Kanta Ueda1, Noriko Koizumi1, Naoki Okumura1*, and Masaki Tanito2*
1. 同志社大学 2. 島根大学
*共同責任著者
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