トピックス
生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻修了生 中川達也さんらの研究成果が、「Experimental Eye Research」に掲載されました。
生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の中川達也さん(2023年3月修了)らの研究成果が、Experimental Eye Researchに掲載されました。
本研究は、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学およびフランスのジャン・モネ大学との共同研究による成果です。
フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)は、角膜の裏側に細胞外マトリックスが沈着することで光が散乱して、視力低下を引き起こす病気です。さらに進行すると角膜内皮細胞が障害されて、角膜が白く濁ることで重度の視力障害を引き起こします。FECDは欧米諸国において最も一般的な角膜移植の原因疾患であり、その発症メカニズムの解明と治療法の開発が求められています。
本研究では、FECD患者から取得した角膜内皮細胞のRNAシーケンス解析を通じて、TGF-β(トランスフォーミング増殖因子ベータ)シグナル伝達経路に関与する遺伝子の発現変化を包括的に解析しました。その結果、TGF-βスーパーファミリーの一部であるGDF5やTGF-β2がFECD患者で発現上昇していることが明らかにしました。また、TGF-βシグナル伝達経路の活性化が、角膜内皮において細胞外マトリックス関連遺伝子の過剰産生を誘導することを、ドナー角膜を用いた実験により確認しました。
これらの成果は、TGF-βシグナル伝達経路の異常がFECDの発症に関与している可能性を示しており、新たな治療標的の発見につながる重要な知見となることが期待されます。

本研究では、FECDの病態形成におけるTGF-βシグナル伝達経路の関与について、網羅的な遺伝子発現解析および実験的検証を通じて明らかにすることを目指しました。角膜内皮の線維化を誘導する因子の特定は、将来的な分子標的治療の開発に向けた重要な一歩です。本研究で新たに示された遺伝子群の関与は、病気をより深く理解するための手がかりになると考えています。この場をお借りして、ご指導・ご支援を賜りました先生方、共同研究者の皆様に深く御礼申し上げます。
本研究の詳細な内容は、以下をご覧ください。
タイトル
Involvement of TGF-β signaling pathway-associated genes in the corneal endothelium of patients with Fuchs endothelial corneal dystrophy
著者
Tatsuya Nakagawa, Tetsuro Honda, Soichiro Inagaki, Taichi Yuasa, Theofilos Tourtas, Ursula Schlötzer-Schrehardt, Friedrich Kruse, Ines Aouimeur, Hanielle Vaitinadapoule, Gauthier Travers, Zhiguo He, Philippe Gain, Noriko Koizumi, Gilles Thuret, Naoki Okumura
関連情報
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40081749/
PMID: 40081749
お問い合わせ |
生命医科学部・生命医科学研究科事務室 TEL:0774-65-6020
|
---|