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トピックス

生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻修了生 大山裕貴さん、伊東優さんらの研究成果が、「Investigative Ophthalmology & Visual Science」に掲載されました。

2025年6月13日 更新

生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の大山裕貴さん(2021年3月修了)、伊東優さん(2025年3月修了)らの研究成果が、「Investigative Ophthalmology & Visual Science」に掲載されました。

このたび、本学の研究グループは、角膜移植の原因の約40%を占める眼疾患であるフックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)の新たなマウスモデルの作製に世界で初めて成功しました。本研究は、伊川正人教授(大阪大学・微生物病研究所)との共同研究による成果です。

FECDは、角膜内皮細胞が徐々に減少し、角膜が白く濁ることで視力が低下する病気です。この病気の原因として最も多く知られているのが、TCF4遺伝子内の三塩基繰り返し配列の異常な伸張です。

研究グループは、ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)を用いて、この特徴的な遺伝子変異を持つマウスを作製しました。その結果、このマウスがFECDの典型的な症状を再現することを明らかにしました。この成果により、TCF4遺伝子の三塩基繰り返し配列の伸張が、単独でもFECDを引き起こすのに十分であることが世界で初めて証明されました。今回の研究成果は、FECDの病態メカニズムの解明に貢献するだけでなく、今後の治療薬の開発や新たな治療法の探索にもつながる重要な一歩であると考えています。

生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻修了生 大山裕貴さん、伊東優さんらの研究成果が、「Investigative Ophthalmology & Visual Science」に掲載されました。 (115001)

【大山裕貴さんのコメント】

TCF4遺伝子のリピート配列は、患者さんの遺伝子で高頻度に認められることから、長年にわたりFECDの病態に関与していると考えられてきました。しかし、リピート配列が具体的にどのような影響を及ぼしているのかは不明でした。本研究では、このリピート配列を組み込んだマウスを遺伝子改変技術によって作製し、世界で初めてリピート配列によるFECD病態の再現に成功しました。リピート配列は非常に取り扱いが難しく、特にマウスへの導入は困難を極めましたが、粘り強く取り組んだ結果、病態を示すモデルマウスが誕生したときは、本当に感慨深い瞬間でした。

このモデルマウスの誕生により、TCF4のリピート配列がどのようにして病態を引き起こすのか、その分子メカニズムを今後さらに解明していくことが可能になります。そして、メカニズムが明らかになれば、新薬開発において、より有効なターゲットの特定が期待されます。基礎研究が長年の謎を解き明かし、臨床応用へと繋がる可能性を実感できた、非常にやりがいのあるプロジェクトでした。

私が所属したティッシュエンジニアリング研究室は、こうした基礎研究から医学の進歩へとつながる研究プロセスを自らの手で実践できる貴重な環境です。基礎から応用に至る一連の流れを実際に経験できる研究室は限られており、その中で研究に打ち込めたことは、私にとって大きな財産となりました。研究室での経験を通じて、自分が本当に目指したい道、たとえば、基礎研究に取り組むのか、製薬の現場に関わるのか、あるいは医療製品の設計・開発の分野に進むのかを、深く考えることができました。将来の進路を見据えるうえでも、非常に意味のある大学生活を送ることができたと感じています。

最後になりましたが、本プロジェクトにお力添えいただいたすべての皆様に心より感謝申し上げます。

生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻修了生 大山裕貴さん、伊東優さんらの研究成果が、「Investigative Ophthalmology & Visual Science」に掲載されました。_伊東さん (115002)

【伊東優さんのコメント】

この度、修士課程での研究成果を論文として掲載できることを心から嬉しく思います。
視力を失う不安を抱える世界中の患者さんのために、少しでも希望の光となる研究に携わることができたことに深い意味を感じています。FECDは多くの方が角膜移植を必要とする深刻な疾患でありながら、これまで適切な動物モデルが存在せず、病態メカニズムの解明や治療法開発が困難でした。今回のマウスモデル作製により、患者さんの苦痛を和らげ、視力を守る新たな治療法への扉が開かれたと考えております。

この研究は単なる学術的な成果にとどまらず、実際に困っている患者さんの生活の質を向上させる可能性を秘めています。困難でありながらも、同時に人々の未来に直接的な希望をもたらすこのような研究に思いっきり打ち込める環境がティッシュエンジニアリング研究室にあったからこそ、今回の成果を得ることができました。後輩たちには、ぜひこの素晴らしい環境で患者さんの希望となる医学研究に挑戦していただきたいと願っています。

私は現在、IT企業でヘルスケア領域のお客様を対象とした業務に携わっており、卒業後も医療分野との関わりを持ち続けています。大学での研究経験を糧に、一人でも多くの患者さんの笑顔のため、そして世界の医学発展に貢献できるよう、これからも日々精進してまいります。

本研究の詳細な内容は、以下をご覧ください。

タイトル

Generation of a Mouse Model of Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy by Knock-in of CTG Trinucleotide Repeat Expansion in the TCF4 Gene

著者

Yuki Oyama*, Suguru Ito*, Taichi Yuasa, Mizuki Ueda, Satoshi Chiba, Tatsuya Nakagawa, Ayaka Izumi, Masahito Ikawa, Noriko Koizumi, and Naoki Okumura

*共同第一著者

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