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生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻修了生 藤本創也さん、遠藤眞子さんらの研究成果が、「Cells」に掲載されました。
生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の藤本創也さん(2025年3月修了)、遠藤眞子さん(2018年3月修了)らの研究成果がCellsに掲載されました。
角膜疾患治療の新たな展開
フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)は、角膜内皮細胞の減少や細胞外マトリックスの異常蓄積により角膜の透明性が失われて視力が障害される進行性疾患です。現在の主な治療法は角膜移植ですが、ドナー不足や手術の侵襲性などの課題があります。
主な研究成果
研究チームは、カスパーゼ阻害剤であるEmricasanがFECDの治療に効果的かどうかを調査しました。その結果:
- ・FECD患者由来の細胞では、Emricasanが細胞死(アポトーシス)と角膜内の異常物質の蓄積を抑制することがわかりました
- ・この薬剤は特にカスパーゼ7という酵素を阻害することで効果を発揮すると考えられました
- ・FECDのモデルマウスにEmricasanの点眼薬を使用したところ、角膜内皮細胞の密度と形態の両方が改善しました
将来の展望
この研究はFECDの分子メカニズムに関する新たな知見を提供し、将来的には角膜移植に代わる薬物治療法の開発につながる基盤を確立しました。

本研究には多くの方々が携わっており、先輩方が積み重ねてこられた数々の成果に支えられています。心より感謝申し上げます。研究室配属後に初めて取り組んだ研究が、このように論文という形になったことを、大変嬉しく、また感慨深く感じております。
在学中は、本研究について国内外の学会で発表する機会をいただき、世界中の研究者の方々と直接議論を交わすという貴重な経験をさせていただきました。科学を通じて国際的な交流が生まれる場に身を置けたことは、これからの社会人生活においても大きな財産になると感じています。
現在は機械系メーカーに勤務し、グローバルに展開する製品の設計開発に携わっております。学生時代に得た経験を糧に、今後も世界に通用するものづくりに携わっていきたいと考えています。本研究の成果がFECDの新たな治療法の実現に繋がり、患者さんの助けとなることを心より願っております。

【遠藤眞子さんのコメント】
この度、私たちの研究が学術誌に掲載される運びとなり、大変嬉しく思います。本研究では、Caspase阻害剤に関する新たな知見を提供することを目的とし、研究を進めてまいりました。
在学中は実験や解析を重ねる中で、幾度となく困難に直面しました。しかし、そのたびに共同研究者や指導教員の皆様、関係者の方々の支えがあり、乗り越えることができました。皆様のご協力と励ましがなければ、この成果を達成することはできなかったと深く実感しており、大変感謝いたしております。
本研究が今後のさらなる研究の礎となり、学術的・社会的に貢献できることを心より願っております。
そして最後に、本論文の掲載にご尽力いただいた指導教員、共同研究者の皆様、私の卒業後も研究を継続してくださった後輩の皆様、そして論文掲載に関わった全ての方々に、心より感謝申し上げます。
本研究の詳細な内容は、以下をご覧ください。
タイトル
Therapeutic Potential of Emricasan, a Pan-Caspase Inhibitor, in Reducing Cell Death and Extracellular Matrix Accumulation in Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy
著者
Sohya Fujimoto*, Mako Endo*, Shigehito Tonomura, Fuuga Tsuji, Hirotaka Haraguchi, Kanna Hasegawa, Taisuke Numao, Ayaka Izumi, Theofilos Tourtas, Ursula Schlötzer-Schrehardt, Friedrich Kruse, Yuki Oyama, Masahito Ikawa, Albert S. Jun, Noriko Koizumi and Naoki Okumura *共同第一著者
関連情報
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