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生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 中村優斗さん、兼松悠真さんらの研究成果が「Computers in Biology and Medicine」に掲載されました。

2025年7月23日 更新

生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室の中村優斗さん、兼松悠真さんらの研究成果が「Computers in Biology and Medicine」に掲載されました。

このたび、本学の研究グループは京都府立医科大学 眼科学教室(視覚機能再生外科学)との共同研究により、眼窩骨折をCT画像から自動的に検出し、緊急手術が必要なタイプを判別する人工知能(AI)システムの開発に成功しました。本研究は眼形成の専門家である、京都府立医科大学の奥拓明医師、渡辺彰英医師らとの共同研究として行われました。

眼窩骨折は、眼球を収める骨(眼窩)が外傷により折れる怪我で、特に「閉鎖型」と呼ばれるタイプは、眼球を動かす筋肉が骨折部位に挟まれるため、緊急手術が必要です。しかし、CT画像での診断は専門的な知識を要し、見逃されると視力障害や複視(物が二重に見える)などの後遺症を残すことがあります。

研究グループは、686名の眼窩骨折患者のCT画像(約46,000枚)を用いて、2段階の深層学習システムを開発しました。第1段階では骨折の有無を検出し、第2段階では骨折のタイプ(閉鎖型または開放型)を判別します。その結果、患者レベルでの骨折検出率は94.7%、閉鎖型の判別精度は100%という高い性能を達成しました。

今回の研究成果は、専門医が不在の救急外来や地域医療において、緊急手術が必要な眼窩骨折を見逃すリスクを大幅に減らし、患者の視機能を守ることにつながる重要な技術開発であると考えています。

生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 中村優斗さん、兼松悠真さんらの研究成果が「Computers in Biology and Medicine」に掲載されました。(中村) (116687)

【中村優斗さんのコメント】

この度、修士課程での研究を論文として掲載できることを心より嬉しく思います。
医療AI分野での研究を通じて、技術により患者さんの未来に貢献できる可能性を実感する貴重な経験となりました。研究を進める中で、異なる専門分野の方々との協働を通じて多角的な視点を身につけることができ、今後の人生において財産になると考えています。
本研究をさらに発展させ、実際の医療現場において診断支援ツールとして広く活用されることを目指したいと思います。最後に、本研究に関わってくださったすべての方々に心より感謝申し上げます。

生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 中村優斗さん、兼松悠真さんらの研究成果が「Computers in Biology and Medicine」に掲載されました。(兼松) (116686)

【兼松悠真さんのコメント】

このたび、学士課程での研究成果が論文として採択されましたことを、大変光栄に存じます。
眼窩骨折は発生頻度こそ低いものの、診断が遅れると眼球運動障害などの重篤な機能障害に発展しかねない重要な疾患です。
本研究で開発したAI診断システムは、CT画像から眼窩骨折を高精度に判定し、迅速かつ正確な診断支援を実現できることを示しました。本技術が臨床現場における診断精度の向上と患者予後の改善に寄与することを願っております。最後に、ご指導・ご支援を賜りました先生方、共同研究者の皆様に心より御礼申し上げます。

【奥拓明医師(京都府立医科大学)のコメント】

眼窩骨折は外傷を契機に発症し、複視によって日常生活の質(QOL)が著しく低下する可能性のある疾患です。しかしながら、本疾患は医療従事者の間でも十分に認知されておらず、外傷診療を専門とする医療機関や放射線科医においても、しばしば見逃されることがあります。特に閉鎖型骨折では、外直筋や眼窩脂肪が骨片に挟まれることにより、顕著な眼球運動障害や嘔気・嘔吐を呈します。臨床の現場では、これらの症状が打撲による脳震盪と誤診され、治療開始が遅れる症例を多く経験しております。

本研究では、AI技術を活用することで、眼窩領域に不慣れな医師でもCT画像から閉鎖型骨折を見逃さずに診断できることを目指しております。AIモデルの構築には多数の学習症例が必要であり、そのためには多施設共同での症例収集が一般的ですが、多施設化によりデータの均質性や診断精度に課題が生じることもあります。

その点、当院では過去10年間にわたり1000例を超える眼窩骨折症例を経験しており、本邦においてもこれほどの症例数を有する施設は極めて稀です。本研究成果は、極めて意義深く、学術的にも価値の高い報告であると考えております。今後の課題としてはより精度の高いAIの構築、閉鎖型骨折でも筋絞扼型と脂肪絞扼型の鑑別を行うこと、前向き研究でAIの精度を確認することで、さらに研究を進めてまいります。

最後に、本研究にあたり多大なるご助力を賜りました同志社大学の奥村直毅先生、小泉範子先生をはじめ、同教室の先生方に心より感謝申し上げます。臨床医としての限界は、データ処理や情報技術に関する知識の不足にあると痛感しておりますが、今回このような研究を、同志社大学の皆様と共に推進できたことを大変光栄に思っております。

本研究の詳細な内容は、以下をご覧ください。

タイトル

Hierarchical Deep Learning System for Orbital Fracture Detection and Trap-door Classification on CT Images

著者

Hiroaki Oku*, Yuto Nakamura*, Yuma Kanematsu*, Ayumu Akagi, Shigeru Kinoshita, Chie Sotozono, Noriko Koizumi, Akihide Watanabe, and Naoki Okumura
* 共同第一著者

関連情報

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40644886/

PMID: 40644886
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FAX:0774-65-6019
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