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生命医科学研究科 医生命システム専攻 東優人さん、生野幹太さんらの研究成果が、「Biochemical and Biophysical Research Communications」に5月14日付で掲載されました。
東優人氏(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士後期課程3年次生)、生野幹太氏(生命医科学研究科 医生命システム専攻 博士前期課程1年次生)、角田伸人氏(生命医科学部 准教授)、舟本聡氏(生命医科学部 教授)、宮坂知宏氏(日本大学 薬学部 教授)、斎藤貴志氏(名古屋市立大学 医学部 教授)、西道隆臣氏(理化学研究所 チームリーダー)の共同研究成果が、「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)患者の脳内では、これまでに、次の2つがわかっています。
1)アミロイドbタンパク質(Ab)が蓄積し、老人斑という凝集物が神経細胞の外側に形成されます。
2)タウタンパク質は、過剰なリン酸化を受けて神経細胞の内側に蓄積します。
しかしながら、細胞内外で蓄積するこれらの関係性については、いまだに解明されておりません。東さんらは、凍結組織切片における新たなリン酸化タンパク質を検出する方法を開発し、事前に特許を取得しました(特開2020-038192)。この手法を用いると、斎藤先生と西道先生が開発したアルツハイマー病モデルマウスのマウス脳では、老人斑の中心にリン酸化を受けたタウタンパク質が存在することが明らかとなりました(図1)。これまでの一般的な組織学的解析方法では、同じモデルマウス脳でも老人斑の中心や脳組織全体にリン酸化タウタンパク質は検出できておりません。特許を取得した解析方法のみ、リン酸化タウタンパク質の検出が可能となりました。細胞内外に別々に蓄積すると考えられてきたAbとタウタンパク質ですが、実は一緒に凝集していたという大きな発見へ至りました。また生野さんは、この方法を使いタウタンパク質の遺伝子を欠損したアルツハイマー病モデルマウス脳を解析した結果、老人斑のみ検出されることがわかりました(図2)。これらの研究成果は、『アミロイドカスケード仮説』*を強く支持する結果であります。今後は、この手法によって、ヒト組織におけるアルツハイマー病発症機序を解明できる可能性と、タウタンパク質以外のリン酸化を受けたタンパク質についての組織学的解析が可能となりました。
*アミロイドカスケード仮説
アルツハイマー病発症へ至る脳内では、先に老人斑が形成され、その後にタウタンパク質が凝集するという仮説が提唱されている。多くの研究者はこの仮説を支持しており、現在のアルツハイマー病に対する治療もこの仮説に基づいている。


タイトル
High Affinity Staining for Histological Immunoreactivity revealed phosphorylated tau within amyloid-cored plaques in the brain of AD model mice.
著者
東優人、生野幹太、斎藤貴志、西道隆臣、宮坂知宏、角田伸人、舟本聡
雑誌
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X25007399
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