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生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻修了生 中川達也さんらの研究成果が、「Cornea」に掲載されました。
生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室(指導教員:小泉範子教授、奥村直毅教授)の中川達也さん(2023年3月修了)らの研究成果が、Corneaに掲載されました。
本論文は、德田雄市助教、中野正和准教授、田代啓教授(京都府立医科大学・ゲノム医科学)およびTheofilos Tourtas教授、Ursula Schlötzer-Schrehardt教授、Friedrich Kruse教授(University of Erlangen-Nürnberg)らとの共同研究による成果です。
フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)は、角膜内皮細胞が徐々に機能を失い、角膜が濁って視力が低下する進行性の疾患です。FECD患者全体の約8割においてTCF4遺伝子のCTGトリヌクレオチドリピートの異常を認めることから、TCF4の異常が遺伝的リスク要因とされています。しかし、TCF4に異常がない患者でもFECDを発症するケースがあり、その原因には不明点が多いです。
本研究では、RNAシーケンス技術を用いて、TCF4遺伝子に異常がある患者、異常がない患者、そして健常者の角膜内皮細胞の遺伝子発現を比較しました。その結果、FECD患者と健常者の間には、多くの遺伝子発現に有意な違いがあった一方で、FECD患者同士ではTCF4の異常の有無に関わらず、遺伝子発現の特徴には高い類似性がありました。またFECDにおいては、酸化ストレス応答や細胞外マトリックスの生産を調整する経路に共通の異常があることが確認されました。結果として、FECD患者にはTCF4の異常の有無に依存しない共通した遺伝子発現の特徴があることが示されました。
【中川達也さんのコメント】
本研究は、多くの共同研究者の皆様のご協力によって実現しました。貴重な知見を共有しながら共に研究を進めてくださった皆様に心より感謝申し上げます。私が在籍していた研究室は、医工学という工学的な知識を学ぶ学科でありながら、指導教員が眼科専門医であるという特徴的な環境でした。そのため、どのような研究が臨床現場では求められているのかなど、お医者さんの視点を意識しながら研究を進めることができました。また、共に研究を進めた優秀な後輩にも恵まれました。これから研究室への所属を考えている学部生の皆さんにとっても、医学と工学の融合を実践的に学べるこの研究室は、大きな成長の機会を与えてくれると考えています。

本研究の詳細な内容は、以下をご覧ください。
タイトル
Transcriptional Profiling of Patients With Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy With and Without Trinucleotide Repeat Expansion in TCF4
著者
Tatsuya Nakagawa, Yuichi Tokuda, Masakazu Nakano, Ayana Tateishi, Mari Yasunaga, Theofilos Tourtas, Ursula Schlötzer-Schrehardt, Friedrich Kruse, Kei Tashiro, Noriko Koizumi, Naoki Okumura
関連情報
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39998965/
Cornea. 2025 Feb 25. doi: 10.1097/ICO.0000000000003841. Epub ahead of print. PMID: 39998965.
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